本日は晴天なり。~ゆく年く・る年冬の陣

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明治座そばで、威風堂々になびく彼の幟で泣きました(※まだ観る前なのに)。

 

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楽しい舞台はあっという間に終わってしまうのですね。

『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』全公演が無事幕を下ろしました。

 

念願の安西くんの明治座での座長。しかもこれまた大好きな辻本くんとのW座長。

私はいまだに『るの祭典』の秀吉・三成の主従をドこじらせているので、安西くんと辻本くんが並んでがっつり絡むお芝居を熱望しておりました。

まさかこんなに夢のような形で叶うなんて!

 

今回のW座長は、敵対する同士ではなく味方同士、藩主と小姓の主従関係です。

安西くん演じる片倉重長は熱血漢溢れる青年なのは聞いてましたが、フタを開けてみたら若さゆえの野心が完全にカラ回りしているちょっとおバカさんな子でした。

『図太く長生き』を信条に、ヘラヘラ飄々と振舞いちっとも武士の威厳を感じない『上司』の伊達政宗にまったく尊敬する部分を見いだせない。

そんな中、真田幸村を仲間に引き入れるための潜入を命じられ、よっしゃーやったるぜ~と意気揚々と九度山へ入り込んでゆく。

 

るひまさんがこういうキャラクターを彼に当ててくるのは最初ちょっと意外でしたが、物語が進んでいけば本当に納得でした。

全員が強烈に個性的。そして全員がそれぞれの『戦う理由』を持って戦を広げてゆく世界に、『戦う理由』を明確に持たない重長は困惑し、翻弄され、その中で自分なりの『正義』を掴み、傷ついた真田幸村を助けたい一心で言う。

「仙台に行きましょう。いい所ですよ、仙台」

 

実は私の弟が以前から、「安西くんは戦隊のレッドが似合うんじゃない」と言っておりまして。

なるほど、彼のレッドらしさは『一番強いカリスマ的レッド』ではなく、『周囲に翻弄されながら成長してゆく主人公的レッド』のそれでした。

まっすぐで、優しくって、やっぱりどこかみっともなくて、それゆえにいとおしい。

そう考えたら、この片倉重長は確かに安西くんのために作られたキャラクターでした。るひまさんは本当に、ずっと安西くんのお芝居を見ていてくれたのだなあ。

 

今回の重長はひたすら走り回ってずっとバカで、東京楽の時には「ど、どーしたの?疲労困憊でおかしくなったか??」と心配になるほどギャグがスベって暴走しまくっているように見えたのですが、最後に家康に刃を向けて「…冗談ですよ?」という時の絶対零度ぶり、あの強烈な緩急…!痺れました!

全てはこの一瞬のための計算だったんじゃないかと思うほど、見事なシーンでした。

 

最後に政宗流の『飄々さ=生きるためのしたたかさ』を会得し、しかし心根は優しいまんまで、その明るさで政宗さまの『亡霊』まで追っ払ってしまう。

ラストシーンで政宗さまと肩組んで去ってゆく後ろ姿、あまりに幸福な結末で泣けました。優しさゆえに傷ついて苦しんでしまう役が似合いすぎるこの2人に、揃って笑顔のエンドマークをつけてくれた幸せ。本当にありがとうございました。

 

るひまさんの舞台に出る安西くんが好きな理由のひとつが、「ああ安西くんもまだまだだなあ」ってきちんと思える事です。

これはとてもいい意味で。

る典、納祭、滝口炎上にリヴァる。芸達者で個性的な先輩たちの中に放り込まれて芝居やパフォーマンスするのを観ると、いつも彼のいい所、良くなった所、まだまだなところが明確に現れます。

彼にまだまだだって思える事は、こいつまだまだ伸びるぞ!とわくわくする事でもあります。もっと沢山の経験していっぱい悩んで、どんどん魅力的な役者さんになってほしい。

 

2017年は安西くんの座長公演がとても多い年でありました。

その締めに、この大所帯で若き座長として担がれ、横に彼のエネルギーを受け止めて下さる温かい辻本座長がいて、素晴らしい座組で1年を締めくくってくれたのは私も嬉しいです。

両座長、本当にお疲れさまでした。また今度は違う関係性で、お2人が芝居で絡むのを楽しみにしています。

 

さて、2018年の予定がまだ何も発表されませんが、今度はどんな形でお芝居を魅せてくれるのでしょうか。

る年の冒頭、花道を堂々晴れやかな顔で歩いてきた安西くん。

今年も役の中で魂を燃やすであろう貴方に、この先の天気予報もどこまでも晴れやかでありますように。