画面越しのface to face~エンゲキノマド『フェイス』
【フェイス】エンゲキノマド「フェイス」。
— 西森英行 (@nishimori__hide) 2020年6月23日
本日6月23日(火)19時より、安西慎太郎・林田航平ペアの配信が始まります。
観る者を感情の渦に飲み込む二人の熱演。
しんた(安西慎太郎)と航平(林田航平)の愛情の深さが滲み出る演技。白熱の心理劇。
是非ご覧下さい。https://t.co/nSzAxCwHQd
※この記事は、オンライン配信版の安西慎太郎・林田航平ペアの回についての感想です。
ようやく、ようやくの安西くんの『芝居の現場』です。
カプティウスから今回より、2018年のる年大阪公演から舞台野球までのほうが空白期間は長かったはずなんですけど、体感的には今回のほうが待ってた!という気持ちです。
役者は2人だけど、様々な『人格』が現れてはぐんぐん展開が動いていく。
1時間以内にぎゅっと凝縮され、中弛みする事なく一気に集中して観られたのは作品自体の展開の面白さはもちろんですが、ほぼバストアップだけの制限された表現で飽きさせない安西くん、林田さんの芝居の力もすごいなと思いました。
朗読劇形式と言ってもしっかりお芝居という感じだったので、台本を読む目線を落とす仕草さえノイズに感じてしまうぐらい。
そしてまた、この2人の芝居の組み合わせも良かった。
解離性同一性障害(多重人格)を持った青年・一樹と、そのかつての主治医・小和田。
安西くん演じる一樹の人格が入れ替わるたびに起こるものすごい感情の緩急、それを柔らかに受け止め、一緒に波に乗るような包容力のある林田さんのお芝居は、観ていてとても安心できるものでした。
それはそのまま、一樹の先生に対する信頼の気持ちに説得力を持たせるものでもあり。
(今回は谷佳樹・平野良ペアの回も観ていて、平野くんの小和田先生の生々しい芝居がたまらなくいいなあと思っていたのですが、
たぶん安西・平野ペアだと感情VS感情のパワー対決みたいになってすっごく怖くなりそう…(笑)。
いつか2人のそんな芝居も観てみたいですけどね!)
林田さんの小和田先生の穏やかさ……の中からはみ出た弱さや冷静さを欠いた姿、
またもうひとりの人格が出てきた時の豹変のグラデーションが素晴らしかったです。
別人格が出てくるとき、眉を非対称に歪ませ、ゆらぁ…っと現れるように顔を上げながら現れる芝居がとても良かったです。
安西くんについて。
多重人格・現代の女の子・猟奇的な殺人鬼などなど、安西くんで一度は観たかった役が一度に凝縮されていて、ファンとしてはたいへん大喜びでした!
サイコパスっぽい性格の役は確かにあれど、マジの猟奇的な役は意外となかったので、ムツオが出てきて先生の目を刺そうとしてるあたりで思わず手を叩いて喜んだのはここだけの話です←(あのコンマ数秒のかっ開いた目が最高にヤバくて興奮した)
私が好きなのは女性の人格・レイカです。
ギャルっぽいハイテンションなノリの中に、妙にイイオンナな艶のある仕草をする瞬間があって、何度かクッ……ってなりました。
これはロズギルのオフィーリアもそうだったな…。初日、喜劇役者の舞台に駆け上がってきて胸から崩れ落ちる『しな』のある動きにもやたらエロスを感じたものです。
安西くん、女性性の役は今後ももっとやってほしいな…。
アッパーなテンションから急にじめっと泣き始めたり、一樹の母親の事を思い出して顔を赤くしながら声を荒げたりする、あの情緒不安定さというか、躁鬱の急降下の生々しさはなんなんだろう…。
今回のオンライン芝居ですごく貴重な機会になったと思ったのが、役者が画面のこちらを見続けている事です。
朗読形式だったとはいえ、感情を交わし合う相手がいる芝居で、こんなに観客のこちら側を向き続けているのってなかなかない。
安西くんは『舞台K』の猿比古しかり『COCOON』のアンジェリコしかり、
強い感情を向ける対象がいる芝居になるとひと際ものすごいエネルギーを放つ役者だと個人的に思っているのですが、
今回の安西くん演じる一樹も、小和田先生に対する『愛されたい』『必要とされたい』『助けたい』…人格によっては『許さない』『殺したい』という強い感情を持った表情で、画面のこちら側を見つめてくるわけです。
なんというか、どれもこれもすっごい表情でした。画面越しでも怯んでしまった。
猿比古なら美咲演じる植ちゃんが、アンジェリコならラファエロ演じる荒木くんが、この凄まじい表情を受け止めてきたんだろうなとつい考えてしまい、
こんな重量級の感情を毎公演ぶん投げられてるなんてそりゃ精神力使うわ…と改めて尊敬の念を抱かずにいられませんでした。貴重な経験でした。
オンライン本読み「フェイス」https://t.co/8r4BzL56iw
— 安西慎太郎staff (@anzaistaff) 2020年6月28日
安西くんとしては、あの作品は完成作品ではなく『本読み』という概念なのでしょうか。
オンラインで芝居をするという事に、どこか割り切れない思いがあるのかなと。
インスタライブでも何度かそういう気持ちを滲ませていたように見えていましたが。
俳優ではなく『舞台俳優』を宣言した矢先でしたし、舞台のお芝居が心底好きな人ですからね…。
これはファンによって考え方はさまざまだと思うのですが。
私個人としてはこんな時世ならなおのこと、良い作品なら形式に捉われずお芝居をしてほしいなという気持ちです。
インスタライブもそれなりに楽しいけど、やっぱり役が入っている安西慎太郎が心底楽しく観られるなあと、今回の『フェイス』で痛感したがゆえに余計にそう思います。
安西くんには、やっぱりお芝居をしていて欲しいんですよね…。